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20世紀の残りは世界旅行がおもしろくする

「頑張って来いよ。待ってるからな、潤…」
「松潤は夢中になると無理するから、自分の身体にも気を遣ってね。」
「…ふたりとも忙しいのに見送りなんて申しわけなかったね。しっかり勉強してくるよ!」

会長に声を掛けられてから季節がひとつ過ぎたこの日、松本の姿は翔と智と共に横浜港にあった。
松本は翔に辞職願いを出した。
「…爺さんのお伴で世界旅行に行くことにしたのか?なら休暇願いで良いだろう?何年も行く訳じゃないし…」
「いや、会長とは行かない。外からじゃ学ぶ事は限られるから。。
翔さん…。俺、一から最高のサービスを勉強したい。俺は何一つ、ちゃんと教わった事無いんだ。コレじゃ人を指導なんて続けられない。だから、辞めさせてください…」

松本が選んだ道は…今、3人の後ろにそびえるビルのような海に浮かぶ五ツ星ホテル、世界一の豪華客船。その新人スタッフとして乗り込む。
会話は全て英語、日本人スタッフは客室スタッフにはいない。会長には身分保証だけを頼んだ。航海ごとの契約になる。望まれるレベルに器量が達して無ければ船から降ろされる。
その厳しい環境で自分を鍛えてみよう。
貴方と並んで歩く為に…。
「絶対に戻ってこいよ!席は空けて待ってるから。」
翔の元に戻れるのは何年先になるか…
それでも翔は松本が桜リゾートを辞める事を許さなかった。休職扱いにするからと。。
『翔さんは寂しいんだよ。必ず帰るって約束しないと行かせて貰えねえぞ。』そう城島に言われて、先の分からない約束をして此処に立っている。
「潤。負けんじゃねぇぞ!元気でな。」
翔は松本の手を握り離そうとしない。
智の幻を追い求め、必死に働いた日々翔の傍らには松本がいた。意識した事はなかったが、その同じ幼年期を里で過ごした潤が翔の傍に居たことは、確実に苦しい翔の日々を支えてくれていた。

その翔の想いが握られた掌から潤に流れ込む。智への感情とは違うのは解っているが、自分の想いも翔に繋がっていた…。
「大野さん…。ゴメン。。」
「えっ?」

松本は小さな声で智に謝ると、自分の手を握っていた翔の腕を強く引いた。

松本の胸に翔の胸が重なる。
松本は翔を想いっきり抱き締めた。