ユメミル、デジ6(ロク) 世界旅行

世界旅行は、素敵に着こなしたいよね

 「モン・パリ」誕生90周年を記念するに相応しい、きちんと起承転結がある世界旅行のレビュー。 各場面に必ず物語があり、それをしっかり描くために十分時間を取った結果、最適な場面数となりました。 ショーの場合、場面を細かく割りすぎると上手く流れができないまま全体として細切れの印象を受けることもあります。 その点、本作はレビュー全体として非常に分かりやすい構成になったと思います。    堂々とした立居振舞い。 自分一人で力み過ぎることなく、組子の力を一つにまとめていく意識の高さと視野の広さ。 ここぞの時にアクセルを踏み込める力、見得を切る技量。 これら全てを兼ね備えながら、フレッシュで愛嬌もある珠城りょうの大劇場お披露目公演は成功だと言えるでしょう。 トップスターの重責へのプレッシャーよりも、新しい月組を組子と築き上げていくことの喜びや楽しさまで彼女から伝わってきました。 個人的にはS6「楽園」、テキーラが最高でした。 紅色とグレーに近い黒ストライプスーツが映え、濃厚な情熱をクールに踊る姿が色っぽく煌いていました。 トドメは最後に銀橋下手で放つ「テキーラ」。 抜け感のある「テキーラ」ですが、情熱のほとぼりが冷めておらず、発する言葉にまだ熱や色気が残っているのです。 このニュアンスが作為的でなく自然に出るのは割と円熟の芸だと思います。 やはり珠城りょうの大器を感じずには入られません。    踊って魅せ、歌で酔わせて、目で殺す。 月組のショーのドラマは美弥るりかが牽引していると言っても過言ではありません。 ダンサーでも、歌手でも、役者でもない。強いて言えばその全て。 美弥るりかは総合的な表現者なのです。2番手という立場になって、今まで以上に痛感しました。 トキメキ、癒し、驚き、発見・・・身も心も全て委ねたくなる存在であり、委ねて油断するとキケンな魅力に堕ちる可能性のある男役です。(いやむしろ堕ちていきたい、堕ちることにすらワクワクしている自分がいます) 彼女のハイライトはS8流麗、シルクロード。 異国情緒が広がる、情感に満ちた銀橋の渡り方。 歌唱、ダンスは前述の通りパーツではなく物語のために表現されていました。 宝塚歌劇、タカラヅカ・レビューには異国感や懐かしさが必要で、美弥るりかはその伝統と雰囲気を継承する数少ない男役だと思います。  このシルクロードの場面、白雪さち花と輝月ゆうまのカゲソロが素晴らしかったです。 こんなに温かいカゲソロはいつ以来でしょうか。 特に凄いのは、2人が声質まで揃えて世界観に合わせたデュエットにしている点です。 掛け合いで歌っている時に一瞬どちらの声か分からなくなるほどでした。 いい歌声を場面に合わせてさらに磨くことで、ドラマはより豊かになりました。    圧倒的な可動域の広さと、それを惜しげも無く披露し続けられる身体能力。 愛希れいかのダンス、その表現力の背景には間違いなくこの全身の可動域の広さがあると見ました。 彼女が大きく踊り、表現することで中心にいる珠城りょうがより男役として、トップスターとして大きく、強く見えるのです。 2歩3歩下がるのでもなく、押し出し過ぎるのでもない、相手役を立て、コンビとして、組としても映える存在になるためのバランス感覚はピカイチだと思います。 また「GOLDEN JAZZ」の頃から開花した「大人の女役」としての魅力的も加わり、正直無敵に近い存在になりつつあります。 それでもなお常に変化し続け、進化と成長が止まらない愛希れいかの躍動は月組にまだまだ不可欠です。    S9「飛翔」で抜群のソロを聴かせ、客席の心まで飛翔させてくれたのは宇月颯。 場面を物語化させ、群舞を七色に輝かせる歌唱力、その背景には冷静で確かな技術がありました。 夢と希望を奏でるための技術。 転調のタイミングで旋律の表情も高揚するのがハッキリと伝わってきます。  ダンスで特に酔ったのはS6「楽園」、テキーラの登場シーン。 スポットが当たった瞬間ギラつき、不敵なまでの笑みを浮かべて全力で押し出す彼女の存在感に即ノックアウト。 後で映像で見返したらオラオラしているのに立ち姿のラインは美し過ぎる直線でもう一度ノックアウト。(やはりこういう美しさに酔うにはブルーレイ画質がベストだと思いました) その後、濃厚なのに切れ味鋭く踊るので、色気がシャープに飛び散る天国が訪れます。 果たしてテキーラは必要なのか?というくらい酔える場面になりました。    適材適所と予定調和にならないような組子を引き出す演出。 王道は演出次第で飽きないことを稲葉先生は証明しました。  さて、上田久美子先生はどんなショーの世界を描くのでしょうか。 今の月組は上田先生の演出に合うスターが多いように思います。 かなり弾けた公演解説は確信犯と見ています。 解説で説明する気はないのでしょう。観に来て欲しいというメッセージと受け取りました。 想像できない、しようもないのに(から)楽しみでなりません。     「ヅカデミー賞2017」、もう折返し地点を通過しました。引き続き投票をお待ちしております! 投票は下記記事のコメント欄へ。ヅカデミー賞2017【銀橋Weekly × リビコミュ「宝塚LOVE」】